
スキをちょうだい。
第1章 ひみつ
家を出て、学校までの道を歩いていく。
周りは自分と同じ高校の制服で溢れかえっている。
朝からパワーに満ちている空気をうざったく思いながら歩くのは、平日の日課のようになっていた。
冷えた鼻先をマフラーにうずめた彼の視界に、一組のカップルが映る。
普通のカップルならなるべく見ないようにするのだが、彼らは航太にとって、目を離せない「特別」な存在だった。
目の前の二人は幸せそうに笑いあっている。
お揃いのマフラーがその度に揺れる。
手と手はしっかりと指を絡めていてーー。
チリ、と、首筋のキズが痛んだ。
ーなんなんだよ。
心の中で舌打ちをして、航太は二人を追い抜かしにかかった。
真横にさしかかった時、「彼」と目があった。
心情を見透かされる気がして、航太はすぐに目線をそらして、道を急いだ。
