
スキをちょうだい。
第3章 言葉では伝わらないから
環は、高校生にしては珍しく一人暮らしをしている。
古いアパートの一室でだいぶ年季が入っているが、友だちを呼んで、多少暴れても充分な広さはあった。
「ねぇ、ごめんって」
その部屋で、環は航太に誠意のない謝罪を繰り返していた。
というのも、連れ回された航太が怒りを露わにしたからである。
それからずっとこの調子なのだが、いかんせん、環が反省しようともしないので、航太の怒りは、なかなか鎮まらないのであった。
「ごめんって言ってんじゃん」
言いながら、環はケイタイでゲームをしている。
「そんな態度で許すヤツはいないと思う」
航太が冷静に怒りを燃やしたところで、『ゲームオーバー』という音声が入り、環はケイタイを手放した。そして、口を開く。
「航太しかいないんだよ。つきあってくれるの」
「梨恵ちゃん、いるだろ」
「気つかうから無理」
「なんだそれ。だったら別れろ」
「極端だなぁ」
環はいつも通りに笑うが、航太は仏頂面のままである。
少しの沈黙。
環が思いついたといわんばかりに手を叩く。
