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第4章 不穏ナくうき


 航太は環と連絡を試みたものの返事は返ってこず、そのまま帰りのホームルームをむかえた。

ーなんで返事くれないんだ?

 教師の話は聞かずに、環の姿を見つめながら、悶々とケイタイを握りしめる。

 と、そのケイタイに通知が入った。
 相手は、かなでだった。

『いっしょに帰ってもいい?』

ー馴れんのはやいな、こいつ。

 と、思いながらも、断るのは気が引けたので、了解の返信をする。

 すると、すぐにまた通知が入った。

『ありがと(*´ω`*)
 昇降口で待ってるね』

 かなでとのメールが終わり、ホームルームも終わった。

 環は、一度もこちらを見ようともせず、さっさと帰ってしまった。

ーあとで電話するか…‥。

 待っているであろうかなでのことも考えて、航太も早めに教室を出て、昇降口へと向かう。

ーあ。

 人ごみに紛れて、前方から梨恵が歩いてきた。

 その表情は、昼間とは違い、どことなくもの憂げである。

ー環は一緒じゃないのか。

 いつもとは様子の違う彼女を気にしながらも、航太はいつも通りに素通りしようとしたがーー。

「月野くん」

 珍しく、いや、初めて、航太は梨恵に呼び止められた。

「え?」

 思いも寄らない彼女の行動に、面食らう航太。

 梨恵は深刻な面もちで、航太を見つめている。

「ちょっといいかな」

 その物腰に、切羽詰まったものを感じて。

「いい、けど…‥」

 航太は動揺しながらも、頷いた。

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