テキストサイズ

スキをちょうだい。

第5章 亀裂ノあいだ


 そして、休日。
 二人は遊園地に来ていた。
 休日ということもあり、家族連れやカップルで、とても賑わっている。

「航太くん、何乗りたい?」

「えっと、そうだな…‥」

 航太は考えるフリをしながら、焦っていた。

 実をいうと、ジェットコースターのような絶叫マシンが得意ではなかったからだ。
 しかし、それを正直に言うのは気が引けた。
 申し訳なかったのだ。
 だって、かなではこんなにもわくわくした様子なのだから。

「出雲に合わせるよ」

「じゃあ、あっち!」

 笑顔を輝かせながら、行き先へ踏み出すかなで。
 その間に、さり気なく航太の手を握る。

「え、おいっ」

 航太が顔を赤くして、抗議しようとするのを、かなではウインクで制した。

「デートなんだから、ね?」

 有無を言わさず、突き進んでいくかなでに、何故だか航太は不満を覚えなかった。

 環といるときは、不機嫌になることも多かったはずなのに。

ーって、あいつはもう関係ないだろ。

 航太はかぶりを振って、相手のひんやりと冷たい手を握り返した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ