テキストサイズ

スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


 やがて、七瀬は階段を駆け上がりーー屋上へ続くドアまでやってきた。
 しかし、押そうが引こうが叩こうが、施錠されたドアは開かなかった。

「鬼ごっこは、終わりでいいか?」

 後ろから声をかけると、彼女はビクリと震え上がって、恐る恐るといった様子で振り向いた。

 航太は、階段上の相手から目を離さないまま、荒くなった息を整える。

 七瀬も、肩で息をしながら、航太のことを見下ろしていた。

 落ち着いたところで、彼は懐からあの写真を取り出し、相手に見せた。

「これ、知ってるよな?」

「ご、ごめんなさい!」

 七瀬は否定をすることもなく、土下座しそうな勢いで頭を下げ、弁解をはじめた。

「あ、あた、あたしはっ、頼まれただけなんです! あたし、だって」

 そこで顔をあげた彼女は、今にもこぼれ落ちそうなほど、目に涙を溜めていた。

「と、東堂くんが、す、好きで、それで、あの…‥」

 言葉を詰まらせた相手を、航太は黙って見つめていた。

 怒りも悲しみも感じられない瞳だった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ