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スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


 七瀬は涙をぬぐい、息を一つすると、幾分、落ち着いた様子で続けた。

「二人が別れたらいいなって思ってたんです。そしたら、協力してあげるって言われて。月野くんが好きだからって。一緒だねって」

「ちょっと待て。それは誰に言われたんだ?」


 ざわり、と、心にさざ波がたつ。

 聞かなければならない。
 でも、聞きたくない。

 予想はしていたがーー恐ろしくて、心の底にしまいこんでいた答えをーーやはり、七瀬は口にした。


「出雲かなで」


 どこか遠くで雷鳴が轟いた。

 気がつけば、あんなに暑かった体が冷えて、今では鳥肌がたつくらいに寒かった。

「しゃ、写真はバラまいてません。藤吉さんに見せたやつしかないです。本当に!」

「分かった。ありがとう」

 航太は、夢の中のようにぼんやりと呟いて、階段を降りた。

 後ろから七瀬が何がしかを言っていたが、彼の耳には入らなかった。

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