
スキをちょうだい。
第6章 ボクダケガ
自分がショックを受けているのかも、もはや分からなくなっていた。
マヒした頭のまま教室へ戻ると、いつものように田中とかなでが言い争っている。
席へ近づいていくと、かなでが笑顔で声をかけてきた。
「おはよう、航太くん」
いつもなら癒されるはずのその表情が、ひどく歪にゆがんでみえた。
すると、マヒがだんだん解けてきて、代わりに怒りがこみ上げてきた。
ふざけるな。
人のことめちゃくちゃにしやがって。
そう怒鳴ってやりたくなったが、航太は、喉まででかかった言葉を飲みこんで、変わりなく挨拶を返した。
「あぁ、おはよう」
ここで感情のままに怒鳴っては、せっかくの努力が水の泡になってしまう。
しかし、このまま許すわけにはいかなかった。
おそらく、動機の全ては七瀬が吐いただろう。
だから、今更、訊くことはないし、聞きたくもない。
ただただ、罵声を浴びせたかった。
殴ってやりたかった。
