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スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


 だが、それを学校でやってしまえば終わりだ。最低でも謹慎処分にされるだろう。

 タイミングを掴まなければ。
 相手を攻めるタイミングを。

「航太くん」

「え」

 名前を呼ばれて我に返ると、そこにはかなでの顔があり、航太は思わず顔をそらしてしまった。

 明らかに嫌悪の態度をみせられたかなでだったが、気にしていないのか、気づいていないのか、彼は笑顔で言った。

「今度、ボクの家においでよ」

 グルグルと、航太の頭の中が回転を始める。

 家ならば、殴るまでは出来なくても、相手の心を折ることは可能だろう。
 そして、それを誰かに見られることもない。

ー逃す手はないよな。

「えー、おれも」

「わかった。いつにする?」

 田中の言葉を遮って、肯くと、かなでは腕をあげて喜んだ。

「やったぁ!」

「おい、無視か。おーいっ!」

 田中の叫びは、二人には届かないのであった。

 もし、届いたとしたら、航太の運命は変わっていたのかもしれないが。

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