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スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


 決戦の日は、明日に決まった。

 航太は、明日のことを考えて、少しばかり緊張しながら、ベッドに寝転がった。

 ふと、ケイタイが震えた。
 メール用のバイブ音ではなく、電話用のものだった。

 確認すると、画面には環の文字が浮かんでいる。

 心臓が一気に跳ね上がった。

ーなんで今更…‥。

 震える指が画面に触れる前に、電話は切れた。

 息を吐きつつ、不在着信になった画面を見つめる。

 内容は気になったが、かけ直す気にはなれなかった。

 しかし、想いが心から溢れ出してくる。

ー環。あぁ、たまき。

「会いてぇなぁ…‥」

 そっと呟いて。
 じわりと視界が滲んだ時。

 彼は、改めて後悔する。

「あんなこと、言わなきゃよかった」

 『トモダチ』に戻る。

 決断をした時、航太の隣にはかなでがいた。

 その笑顔の裏に、悪意の塊が隠されていたことを、当時の航太は知らなかった。

 だからこそ言えた言葉であり、かなでを心底、軽蔑している今ーー『トモダチ』という単語が重く感じた。

 あの時と全く一緒だった。

 梨恵と付き合うことを許したあの日。

 そんなこと思っていないのに。
 そうなりたいと願っているのに。

 見栄を張って、カッコつけて。

「バカみてぇ…‥」

 自分の間抜けさに苦笑しつつ、航太は画面に浮かぶ文字を撫でた。

 その手つきは、環という文字から、少しでも勇気をもらおうとしているようだった。

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