
スキをちょうだい。
第6章 ボクダケガ
かなでの家は、高級住宅地にあった。
そのなかでも一際大きな豪邸だ。
思わず、圧倒される航太に、かなでは当たり前な様子で言った。
「今度のお父さんが医者だから、お金持ちなんだよね」
その父親は母親と一緒に旅行へ行っていて、今日は帰ってこないのだという。
航太は、ドラマなどで、金持ちが一般市民の家を犬小屋だと揶揄するのに納得しながら、かなでについていった。
通された彼の部屋も、航太の部屋よりも広く、置いてある家具も高価そうなものばかりだった。
「がんばって掃除したんだよね。航太くんが来るからさ」
えへへ、と、照れくさそうに笑う姿は、その奥に黒いものを隠しているとは思えないほどに純粋であった。
ーそうだ。オレは豪邸に驚きに来たんじゃない。
航太は、渇いた唇をそっと舐めた。
目的を意識すればするほど、喉が渇いた。
手汗がすごいのに、手はとても冷たかった。
