
スキをちょうだい。
第6章 ボクダケガ
楽しそうに、愉快そうに、彼は続ける。
「七瀬ちゃんって気が弱いからさ、逃げまわっとけって言っといたんだけど、ダメだったみたいだね」
言い終わった一瞬で、かなでは顔から笑みを消し、低い声で呟いた。
「本当に、使えない女」
そこには、背筋が冷えるほどの、冷酷な感情が窺えた。
航太は生唾を飲みこんで、声を出した。
「言うことはそれだけか」
かなでは鼻で笑い、上目遣いで相手を見た。
「謝ってほしくて来たんじゃないでしょ? ボクが犯人だって知ってて、ここにいるんだから」
口を開きかけた航太を、再び、かなでは制した。
「当ててあげる。キミはボクに報復しにきたんだ。口汚く罵って、気が済むまで殴ろうとしてる。ね、違う?」
かなでは笑顔だった。
今までのかわいらしいものではなく、隠していた悪意が全面にでたような、相手を不安にさせる笑顔。
