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スキをちょうだい。

第6章 ボクダケガ


「身体はね、求める人を変えられるんだよ」

 冷たい手が、シャツの上から身体を撫で回すのを、必死に押さえつける。

「そうじゃなきゃ不倫なんかしないよね」

 一瞬、かなでの声音に不快感がみえたが、航太は気がつかなかった。

 かなでは、必死の抵抗を示す航太を無視して、とうとうシャツの下に手を入れた。

 吐息よりも大きく、身体が反応する。

「航太くん。キミは勘違いをしてる。キミはあいつがスキじゃないんだ。セックスのせいで、そうだって思いこんでるだけ」

 否定と拒絶をのせて、航太は首を振る。

「あいつはそれを知ってる。知ってるくせに、キミを手放そうとしないで、女と付き合っているんだ」

ー違う。何も知らないくせに!

「キミが傷ついているのをみて見ぬ振りしてる。ねぇ、どうして?」

ー『俺たち、別に付き合ってないじゃん』

ー『スキだよ、誰よりも』

 環の声がこだました。

 それを言われて、聞いてしまって、息ができなくなったのは、体が冷えていったのは、一体、なぜだったろうか。

「教えてあげる」

 まるで、悪魔の囁きのように、かなでの言葉は、航太の頭に染みこんでいく。

「キミが都合のいい性欲処理機だからだよ」

 気がつけば、航太は涙を流していた。

「かわいそうに。泣かないで。キミにはボクがいるよ」

 かなでは航太の首筋に、キスを落とした。


「ボクだけが、キミに相応しいんだから」

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