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スキをちょうだい。

第7章 特別なひと


 とても狭い部屋。
 雑多に置かれた家具。

 環の匂い。

 馴れていたものが、特別なものに感じた。

「航太、大丈夫?」

 環に顔をのぞきこまれて、航太は顔を背けた。

「話って」

 相手の視線を受けながら、ぶっきらぼうに話を促す。

 環は腑に落ちない表情をしたきり、しばらく黙りこんだ。

 静寂は、航太の心を落ち着かせてはくれなかった。

 時計が針を刻む音。

 心臓の音。

 つけられた印の傷む感覚。

 そして、環が息を吸いこむ音。

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