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第7章 特別なひと



「実はさ、梨恵と別れたんだ」


 彼の声は大きな波になって、頭の中に打ち寄せてきた。

ー別れたって、え?

 信じられなかった。

 航太はずっと、環が自分のことを『トモダチ以上』の存在だと思っていると、信じて疑わなかった。

 だからこそ、『トモダチ』に戻ろうと言った。

 単身、かなでの家に乗りこんで、辱めを受けたのだ。

 受けてしまった。

 もう、『トモダチ以上』に戻ることは、彼の精神が許さなかった。

「もう梨恵に嘘ついてたくないし、航太にも変な意地はるの疲れたし。よく考えなくても、航太とトモダチになんて」

「待てよ、おい!」

 航太は、続ける環を遮って、声をあげた。
 
「ふざけんなよ! オレが、どんな気持ちで言ったと思ってんだよ、やめてくれよ」

 怒鳴っている途中、大粒の雫が頬を滑った。

「航太?」

 環が触ろうと手を伸ばしてくるのを、航太は後退りして逃げた。

「オレの中ではもう終わってんだよ、お前とは! い、今更、言われたって、遅いんだよ! オレ、お、オレはーーっ」

 荒い息を吐き、涙をぬぐう。

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