
ノンフィクション
第1章 序章
くそっ!何か…何か手はないのか。
俺は……何も出来ないのか!
俺のせいだ、この世界に連れてきてしまった。
だからこの世界から抜け出すまで俺が守るって決めたのに…俺は……
何かが、動き始めるのを感じた。それは何とも言えない穏やかでそれでいて何故かとてつもない力を感じた。
今までに感じた事のない何かが俺の心を支配した。それは絶対に抗う事の出来ない力だった。
赤黒くも眩い光が俺を包みこみ、考えるよりも先に動いていた。
ただ、桐谷を助けたい一心で俺は我を失っていた。
遠矢「うぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
剣先から迸る赤黒く光った光線がデスガロンの頭部を貫く。
そして、俺は剣を降り下ろし、真っ二つに切り裂いた。
切り裂かれたデスガロンは雄叫びを上げながら消え去った。
直後、桐谷が入っている泡も消えた。
遠矢「はぁ………はぁ………」
シン「お、おい、大丈夫か?」
桐谷「遠矢、ありが………」
桐谷の言葉は途中で途切れた。俺を見て桐谷もシンも八神でさえも唖然としていた。
赤黒い光が俺に身に纏い、まるで獣のような形相だったという。
遠矢「俺に………近づくな!」
俺は必死で正気を保とうとした。が、抗えない力に押し潰され俺は気を失ってしまった。
目が覚めたのはそれから三日も後のことだった。シンの家の中で横たわっていた俺が最初に目にしたのは泣いている桐谷だった。
桐谷「遠矢!良かった!目が覚めたのね」
遠矢「う……ここは?」
桐谷「シンの家よ。大丈夫?」
遠矢「ありがとう。何とか大丈夫だ。八神とシンは?」
桐谷「今食材を狩りに行ってるとこよ」
遠矢「そうか…………俺、あの後どうなったんだ?」
桐谷「気を失って倒れちゃったのよ。すぐにシンにお願いしてここに運んでもらって、もう丸三日間寝たきりだったのよ、あんた。」
遠矢「三日もか………なぁ、桐谷」
桐谷「何?」
遠矢「その……無事で良かった。」
桐谷「えっ?」
遠矢「俺はあの時、お前を………」
八神「ただいま!……あら?邪魔しちゃったかしら?」
桐谷「な、なに言ってんのよ!」
シン「春人!目が覚めたか。」
遠矢「ああ、おかげさまでこの通り元気になったぜ!」
八神「良かったですね!」
シン「残念ながらカニ鍋ではないが、夕食にしよう。」
