濃密 恋絵巻
第1章 ~タイムスリップ…!?~
木々が生い茂る中、黙々と野草を摘んでいるゆりなの姿があった。
足元に置かれたざるには、色々な野草が入っていて見た感じ食べられそうだ。
「はぁー…結構取れたぁ ~」
おばあちゃんに野草の 事とか教わってて良か った~~っ
笑顔を浮かべながらざるを拾い上げるゆりなの背後で、草が激しく揺れ何かの気配を感じさせた。
えっ…ま、まさか…熊 じゃないよね…?
恐怖ですくみそうになる身体を必死に動かし、恐る恐る振り向くと…
「こんな所で何をしてい るっ」
「月蔭…」
直ぐ後ろに月蔭の姿があり、どこか慌てた様子だった。
「独りで屋敷の外に出る な」
「えっ?」
「ここは人にとって危険 な所だ
妖怪に喰われてしまう ぞ」
く、喰われるっ!?
「ご、ごめんなさい…」
自分が妖怪に喰われるところを想像したゆりなは、一気に顔が青ざめしょんぼりした。
「怖がらせてすまない
森の中に独りでいるゆ りなを見たらつい…」
「あ…わたしの方こそ心 配かけてごめんなさい …」
慌てた月蔭は迫力があ ってちょっと怖かった けど…
でも…そんなに心配し てくれてるなんてちょ っと嬉しいかも…
…本人には言えないけ ど……
そんな事を思っていると、空腹でまたお腹が鳴りだしゆりなは恥ずかしそうに顔を赤くさせた。
「クスっ…屋敷に戻って 何か作ろう」
「うんっ」
2人は、寄り添いながら屋敷へと戻って行った。
そんな仲良さげな姿を、遠くから恨めしそうに眺めていた女の人影があった。
「人間の女めっ…」