濃密 恋絵巻
第2章 ~歪んだ想い~
オレンジ色の夕日が沈みかけている中、居間で寝そべっているゆりなの姿があった。
男物の浴衣から高校の制服に着替えていて、短めのスカートからは華奢な足が見えている。
遅いなぁ~…
もう掃除もしちゃった し…暇だからって外に も出られないし…
テレビがないって結構 辛いなぁ~…
「はぁー…」
家電に囲まれた自分の家を思い出し、ゆりなはつまらなさそうに溜め息を漏らした。
「…す…ませ……誰か… 居ませ……か?」
微かに聞こえてきた女の人のような声に、ゆりなは起き上がり耳をすませた。
「…誰か…居ませんか? 」
やっぱり女の人の声… 村の人とかかな…?
玄関の方へ急いで行くと、屋敷のすぐ外に着物姿の和風美人が足首を押さえたまま地面にしゃがみ込んでいた。
艶やかな着物と長い黒髪、化粧をした綺麗な容姿はまるで城のお姫様のように見える。
わぁー…綺麗な人…
どこかの城から来たの かな…?
「だ、大丈夫ですか?」
「すみません…足を挫い てしまいまして…
手を貸してくださらな いかしら…」
「あ…はい…今……」
あっ…月蔭に屋敷の外 に出ちゃ行けないって 言われてたんだっ…
…どうしよう…
ほっとくわけにもいか ないし……
考えた末、ゆりなは恐る恐る敷地内を出て女の人に近付いて行った。
「あの、大丈夫ですか? 」
「ええ…簡単に結界から 出てくれてありがとう 」
「え?」
不適な笑みを浮かべる和風美人・琴刃は、口から何かを発射しゆりなの首に命中した。
「痛っ…」
えっ…なにか首に…
チクリとした痛みを感じ、ゆりなはとっさに首を抑えた。
その瞬間、突然激しい目眩に襲われそのまま倒れてしまった。
「ふふ…良い気味…」
月蔭様が助けるのが先 か…妖怪の餌食になる のが先か…
どちらにしても…わた くしの思惑通り……
企みを含んだ笑みを浮かべながら、琴刃は風のように姿を消した。