濃密 恋絵巻
第2章 ~歪んだ想い~
琴刃が姿を消したのを見計らって、茂みに隠れていた妖怪達が倒れているゆりなに襲いかかっていった。
その時、目にも止まらない速さで月蔭の刀が妖怪達を切り裂いた。
「ゆりなっ!」
刀を鞘に収めるなり、倒れているゆりなに駆け寄った。
ゆりなの意識はなく、息苦しそうな呼吸で額からは大量の汗が流れていた。
毒かっ…
まさか琴刃がここに…
月蔭はそっとゆりなの身体を抱きかかえ、急いで結界の張った屋敷の中へ戻って行った。
月蔭は布団の上にゆりなを寝かせると、首に刺さっていた小さな針のような物を手で取った。
直ぐに解毒薬を飲ませ ないと命が危ないっ
だが、琴刃の毒はそこ ら辺の解毒薬では……
焦る想いを必死に抑えながら知恵を絞り、そして何か思いついたようにゆりなの首筋に唇を当てた。
毒針の刺さっていた箇所を牙で少し傷を付け、そこから溢れる血と毒を口に含み布に吐き捨てていく……。
そしてひとしきりそれを繰り返すと、突然自身の手首を咬み血を口に含むとゆりなの唇を塞いだ。
「はぁ…ゆりな死ぬなっ ……」
月蔭は声を掛けながら何度も自身の血をゆりなに与え続け、気が付けば月明かりがその行為を照らしていた。