濃密 恋絵巻
第1章 ~タイムスリップ…!?~
「あの…今は…2015年じ ゃあ…」
「?…いや、戦国の真っ 只中だが…それがどう かしたのか?」
戦国という言葉に、ゆりなは一瞬固まったが直ぐ口を開いた。
「…じょっ…冗談ですよ ね…?」
「冗談じゃない」
「じゃっ…証拠を見せて 下さいっ」
「あ、ああ…わかった… 」
必死なゆりなに、月蔭は押され気味に返事をした。
そして、ゆりなをお姫様だっこするなりいきなり立ち上がった。
「えっ…あのっ…」
「落ちないようにしっか り捕まっていろ」
えっ?
そう思ったのもつかの間、月蔭は物凄い速さで部屋を後にした。
あっという間に屋敷を飛び出ると、辺りは青く生い茂った木々に囲まれていた。
その木々を、月蔭はスピードを緩めることなく器用に避けながら突き進んで行った。
ゆりなの目には、まるで木々が避けている様に見えていて、その風景に思わず見入っていた。
わぁ~っ…すごい…
「クスっ…」
目を輝かせるゆりなを、月蔭は横目で確認して一瞬口元を緩めた。
しばらく突き進んで行くと、森を抜け拓けた場所に辿り着いた。
「着いたぞ」
「あ…これって…」
ゆりなが目にしたのは戦で、武装した軍勢が命を懸けて闘っていた。
「戦だ」
うそ…なんで……
……もしかして、わた し……
タイムスリップしちゃ ったっ…!?
えっえっ、そんな事あ るのっ!?
こんな非現実的な事…
「これって…現実ですか …?」
「あ、ああ…大丈夫か? 」
呆然とするゆりなを心配するように、月蔭は顔を覗き込んだ。
その人間離れした美しい顔のアップに不意をつかれたゆりなは、思わず固まってしまい軽い呼吸困難に陥った。
やっぱり…これは夢… ?
こんな綺麗な男の人が わたしなんかに……
「ここは危険だからそろ そろ行くぞ」
「え…うん…」
月蔭は人目を気にする様にそう言うと、逃げるように森の中に姿を消した。