「先生、食べちゃっても良い?」
第18章 おまけ
後ろに回って、キョウ君が体をそっと抱きしめてきても……誤魔化されはしない。
「キョウ君……」
「何?」
「家庭教師の事だけど……私やっぱり辞める」
料理する手を動かしながら、まな板の方を見つつ私は話した。
考え直してみたけど、キョウ君から反対されてまで働く理由はない。……家庭教師を断ったらまた仕事を探さないといけないけど、キョウ君と一緒にいれるならそれでも良い。
「私、他の仕事もしてみたかったの。販売員とか、接客とか。教師はやめて、そういう仕事を見つけてみようかなって思って」
「……うん」
後ろから聞こえてきた声は、小さくて聞き取りずらかった。
「先生がそう思うなら、俺は応援する……」
同時にぎゅっと腰に回った両腕に力を込められ、肩に顔を置かれ、……続けて囁かれる。
「先生、ありがとう。大好き」
その言葉に私も……と返事をすると、いつの間にか拗ねていた気持ちも消えていた。