バラードは君だけに
第7章 二人の彼
海斗side
取り調べ開始から何時間が過ぎただろう。
さすがに疲れた…。
睡魔がおそう、そんな時だった。
カチャッ
「恭也、ちょっと」
もう一人の刑事が部屋に入ってきて、オレの担当刑事に何か耳打ちしていた。
それを聞くと、彼はオレに向かってにこやかに言った。
「吉野海斗君、釈放です。お疲れ様でした」
「えっ、ホントですか?」
「あぁ。被害者の奥さんが、君の釈放を強く希望されているんだ。幸い相手も大事に至らなくて良かった。
まぁ、彼女をくれぐれも大事にな。
何かあったらいつでも相談に来いよ」
「はい、ありがとうございます」
暖かな言葉が心に沁みる、男前の刑事さんだったな……。
−−−−
廊下では、両親がオレを待っていた。
「海斗ぉ…」
母さんが泣きながらオレに寄ってきた。
「ごめん、父さん母さん心配かけて。もう大丈夫だから」
美羽
また二人で
ゆっくり始めればいいさ……。