バラードは君だけに
第8章 モテる君
《キーンコーンカーン…》
帰りのホームルーム。担任の先生がみんなにプリントを配りながら言った。
「夏休みの前に保護者会を行いますので、家の人に都合のいい日時を聞いてきて下さい」
「…」
保護者会は中学の時から、いつも先生と私の二人きりだった。
親が同席しなきゃ、そんなの意味ないのに。
「あ、それから吉野!」
「え?はいっ…」
いきなり名前を呼ばれて、びっくりしている海斗。
「今日君は残って、先生と補習だからな?」
「ええ〜っ!?」
海斗は私の方を見て、苦い顔をした。
くすっ。
残念、今日の約束はなしになってしまったね…。
ーーーー
海斗と別れて、下駄箱で一人靴に履き替えていた時だ。
「みーうちゃん」
と、私は不意に声をかけられて振り向いた。。
「…えっと」
そこにいたのは、隣のクラスの江口君。
髪型も、服の着こなしもチャラチャラした感じの男の子。
相当な遊び人との噂も聞いていて、私は緊張する…。
「今日は吉野と一緒じゃないの?」
「…補習があるから」
「そうなんだー!
じゃあこれから僕と遊びに行かない?」
「えっ…」
軽いノリの江口君が、さらに私に近づいた。