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太陽も泥でできてるらしい

第2章 晴れの日の話

廊下に出ると意外と風通しがよくて涼しい。阪本と私は並んで歩いて、歩きながら話した。

「ごめんなさい」と謝ろうと思って阪本の方を向き直った瞬間、

「悪かったな、大声出して。」

謝られてしまった。

「なんで阪本が謝るの」
「他の生徒の回答も終わっていたんだから、私が呼びに行けばよかっただけの話だ」
「でも、ボーッとしてたのは私だろ」
「お前が私を無視していたわけじゃないのは知ってるし、どちらにせよ怒鳴り散らす理由にはなり得ない」

私は、この人はものすごい人だと思った。元々阪本の噂は中学の頃から聞いていた。厳しいけど優しいとか、KYだけどいい人とか。でもそんなのよくある誉め言葉だから、普通にいい奴としか思ってなかった。
でも違う。教師に関わらずこんなにまっすぐで正直な人は見たことがない。自分の弱味を人に隠さない。従わせることを良しとしない。急に阪本が輝いて見えた。

「阪本ってほんとにいい人だね...」
思わず口に出してしまうほどに、そう思えた。
「な、なんだ急に」
「私ちょっと見直したよ、ていうか尊敬だよ」
「私の事は...見直すってどこの立場から評価してるんだお前は」

それから私は服の匂いを嗅ぐことについて簡単に話した。阪本は相槌を打ちながら話を聞き終えると、
「...正直、私も結構匂いは嗅ぐぞ」と答えた。

「え、嗅ぐの?阪本も?」
「この時期は特にな。気になってしまうと匂いが確認できるまで嗅ぐことも多い」
「あっ、分かるかも...」
「他人に聞いたことはないが、みんな多少はやっていることだと思うがな」
「変じゃないかな...?」
「変だとしたら、私も同じさ」

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