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それは恋のレッスン

第1章 ☆習い事はじめます

 
 人への伝言メモや手紙の宛名、署名など。いつも字か汚いせいで恥ずかしい思いをすることが多かったけれど、私は愛嬌で乗り切ってきた。
(乗り切るなよ・・・ってはなしだよね)

 田舎の小さな会社ではそれもご愛嬌。

 字の上手な社員は他にもいるし、女子社員は結婚すれば退職していく昔体質の風潮が未だ色濃く残っているこの会社で、六年も勤めていればそんな軽口を叩かれても仕方がない。

 子供の頃から二十年近く言われ続けた『字が下手』という事実は私の短所で。それは自分が良く分かっている。


 ―――コンプレックスなんだよなぁ。


 私は、朝から課長のせいで、もやもやした気持ちを抱えたまま仕事に取り掛かったのだった。


* * *


 私の勤めている会社『有限会社オノデラ』は、事務機・文具・紙・OA機器・オフィス家具製品・コピー機・パソコンネットワークなどを扱っている会社で、平たくいえば街の文房具屋さんが少し大きくなった会社である。

 私が配属されている経理は、六月までは年次決算関係の仕事が立て込んでいて、今はその作業の真っ最中だ。


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