それは恋のレッスン
第1章 ☆習い事はじめます
「あっ、お茶の支度!」
パソコンから顔を上げ、凝った肩を回す。
ストレッチをしながら時計を見れば、針は10:00少し前を指していた。
いまどき、女子社員がお茶くみをする会社は少ないかも知れない。
でも、社長の意向で、うち会社ではお茶くみは女子社員のルーティンな仕事の一つになっていた。
だいぶ薄れて来たものの、女子社員は結婚するまでの腰かけ。仕事が意味するものは花嫁修業、人生勉強・・・という風潮が、未だ色濃く残るこの会社。
社長に悪気は無いのだろう。
ただ女性の幸せに結婚は不可欠だと信じている年代だというだけなのである。
なのでその仕事は未だ健在だ。先輩に言わせれば、お茶くみ一つ満足に出来ないようなら、仕事だって怪しいもの。‟全ての道はローマに通ず”じゃないけれど、‟全ての仕事はお茶くみに通ず“らしい。
でも、最近は結婚しても働き続けている女子社員だって増えているから、いい加減なくならないかな…と言うのが女子社員の本音だったけれど、根を詰めているときなどに、息抜きするのにはちょうど良くて、誰もそれを口にする女子社員はいなかった。
私は席を立つと、給湯室へと向かう。