それは恋のレッスン
第1章 ☆習い事はじめます
私の両親と叔父夫婦は、私が中学生の頃に交通事故で他界した。
去年まで私は、従兄と祖母と一緒に暮らしていたのだけれど、従兄が結婚し、育てのである親である祖母もそれを期に介護付の有料老人ホームに入居してしまった。
―――誰にも相談することもせず。
私も……もう、いい歳だった。
そんな歳の私が祖母のいない家に住み続けるのは、正直、新婚の二人には迷惑だろう。私もお邪魔はイヤだし。
社交的な祖母は老人ホームでも楽しく過ごしているみたいだし、だから私もその家を出て一人暮らしを始めたのだった。
だいぶ一人暮らしにも慣れて来たところで。
でも、趣味らしい趣味もなく、最近は独りで過ごす夜の時間をもて余しつつあった。
そう。ちょうど習い事でもしようかと思っていた所だったのだ。―――それに、
―――課長の言葉、悔しかったし。
これを期にお習字でも習って、課長を見返してやろうと思ったことを恵美子に打ち明けた。
「相変わらず、美緒は課長に溺愛されてるのね」
「だから、ほんと、それは違うってば!課長は性格が悪くて、私をからかうのが好きなだけ」