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第3章 Episode3 挫折



「クロちゃんの舎弟やってね。クロちゃん、ひねくれとるけどエエ人やから、仲良うしたってなレイちゃん」

「レイちゃん!? 何か可愛い……」


可愛い女の子に可愛い呼び名をつけられて、玲二はほのかに赤くなった頬に両手を当てて照れた。

男がやっても違和感バリバリの乙女仕草だが、恐ろしいことに玲二には妙に似合っている。



「……で、昨日、誰に襲われたのかは分からないのか?」

和やかな空気を壊すように、黒斗の抑揚のない言葉が病室に響いた。

「う、うん。俺を刺した人は直ぐに逃げちゃったから顔も分かんない」



昨日の夜……黒斗が有理に罰を与えて立ち去った後、誰かからの通報を受けたらしい警察と救急車が現場に駆けつけ、玲二と有理は病院に運ばれ、そのまま入院となった。

警察から聴取を受けた玲二は、友人である有理と会っていたら何者かに襲われたと嘘の証言をした。


別に有理を庇いたかった訳ではない。


真実が明らかになれば、いずれ洋介の耳にも有理が親友に殺意を抱いていたことが入ってしまう。

信じていた友人が自分を殺そうとしていたと知れば、洋介は深い心の傷を負ってしまう……最悪、人間不信になってしまうかもしれない。


そう危惧した玲二は、真実を隠すことにしたのだ。


玲二の作戦は上手くいき、玲二は通り魔による犯行、有理は死神による犯行として警察は捜査を進めている。

「……そうか」

黒斗は玲二が嘘をついてると分かっているが、追求することなく話題を終えた。

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