Sparkling!
第57章 Naturally
先生は大野さんに多少の身ぶりを交えながら小声で何やら指示していた。
大野さんは真剣な顔で頷くと、軽やかなステップとターンを披露してみせた。
余りのギャップに釘付けになってしまって、
回りからパラパラと聞こえてくる拍手にハッと我に返った。
な……何?今の?
俺は何を見た……てか、何を見せられたんだ?
さっきまで鼻の穴ほじりながら俺らのレッスンを眺めていたヤツに?
それからの俺は集中力を保つことが出来なくなり、
休憩時間にトイレにいく体で帰ってしまった。
「……。」
いや…待てよ?
あの人、ここに入ってからせいぜい二、三年のはず。
見方を変えれば俺だって……
……ああなれるはずだ。
ホントは、実力の差をまざまざと見せ付けられ、もうやめてやろう、って考えてたけど、
ちょっと頑張ってみようと思った。
「あの…」
意を決して、俺はいつもの場所でいつものようにマンガを読み耽るあの人に話しかけた。
「あの…大野さん。」
顔をあげ、大野さんは怪訝そうに俺を見た。
「あとで俺のダンス、見てもらってもいいっすか?」
智「俺なんかでいいの?」
「ええ……。あ、すいません。俺、二宮和也、っていいます。」
智「じゃあ…これ、全部読んでからでいい?」
大野さんはまた、マンガの続きを読み始めた。