
夜が開けるまで
第5章 誤算
由紀は拓馬を応接室に呼んだ。
革張りの三人掛けのソファに拓馬を座らせると、由紀はまっすぐに拓馬を見つめた。
二人きりで会う時とは違い、ビジネスウーマンとしての顔だ。
「単刀直入に言うわね。
今の保障給は今月で打ち切りになるわ。
あと3週間で三件の契約をとらなければ、来月からのお給料が基本給だけになるのよ。」
「本当ですか?俺、そんな話し聞いてないですよ」
拓馬は驚きを隠せなかった。
「だいたい、由紀さんが最初に言わないからじゃないですか」
拓馬は動揺を抑えながらも少々声を荒げた。
