
夜が開けるまで
第6章 一人息子の告白
暫くすると、女将に案内されて、白髪の少し薄い髪をオールバックにした、紳士が入ってきた。
仕立ての良さそうな背広の襟元に金色のバッジが光る。
初老の紳士はニコニコしながら。二人を見ると穏やかな口調で言葉をかけた。
「よく来たねぇ。」
「狭山先生、ご無沙汰しております」
父が正座をして、男に向かい深々とお辞儀をした。
拓馬も父を見習い、ぺこりと頭を下げた。
紳士は、足を引きずりながら、上座にゆっくりと腰を下ろす。
「息子の拓馬です」
「初めまして」
拓馬は緊張の面持ちで、両手に拳を握りややうつむき加減に挨拶をした。
「君が拓馬くんだね。
さぁ、顔をあげてわたしを見てごらん」
