
夜が開けるまで
第6章 一人息子の告白
ある夜、拓馬は父に言葉をかけた。
「昔会った狭山さんと、親父とはどういう知り合い?」
拓馬の父、向井武志はリビングのソファに腰かけて新聞を読んでいたが、拓馬の不意打ちの質問に、持っていた新聞をたたんだ。
武志は暫く無言だった。
「大学の先輩と後輩の間柄だよ」
「また話しをしてみたい。会って伝えたいことがあるんだ。」
拓馬の言葉に、武志は息子の顔をじっと見つめた。
「俺は音楽をやりたい。親父が反対なのはわかってる。
音大に落ちた時に、音楽の道はすっぱり諦めるという約束で大学に行かせてもらった。
だけど、やっぱり挑戦したいんだ。
最近、プロデューサーの人からも認めてもらってデビューできるチャンスが巡ってきたんだ。」
