
夜が開けるまで
第6章 一人息子の告白
拓馬が体を壊して故郷に戻ってきた時、父は自分の会社で働くことを提案してきた。
本心は、父とは違う生き方を望んでいた。
利益のために、家族を犠牲にするようなことはしたくない。
自分自身も、そして母も寂しい思いをしてきたのだから。
なによりも
父に黒い交友関係があることも、愛人があることも知っていた。
父の後を継げば、父の交友関係も引き継ぐことを警戒した。
父の支配下にはなりたくない。
「親父の跡を継ぐにはまだ社会経験が足りない」
拓馬はそう言って父の言葉をかわしたのだった。
そして、目の前に現れたのが、生命保険外交員の由紀だった。
