夜が開けるまで
第7章 葛藤
武志は由紀の意外な提案に眉尻をあげた。
そして少しの間を置くと、静かに答えた。
「では、先にラウンジへ行っててもらえますか。私もすぐに向かいますよ」
「ご一緒させていただき光栄です。では、お先にお待ちしております」
由紀は面接室を退室するような深々しいお辞儀をして、部屋の扉をゆっくりと閉めた。
少しホッとして、大きなため息をつくと再びエレベーターに乗り込んだ。
そしてエレベーター内の鏡に映る自分の瞳を見つめながら、心の中で呟いた。
いくら拓馬の父親とはいえ、見知らぬ男が用意した部屋にのこのこと居座るほど間抜けな女じゃないわ
灯りの消えたベッドルームの物陰に、由紀は人の気配を感じ取っていた。