
夜が開けるまで
第1章 仮面夫婦
凛とした響きのある言葉に隆は黙り込んだ
由紀はさらに言葉を続けた
「あなたが見た男は、営業所の新人よ。
担当エリアを一緒に回り契約をまとめるのが私の仕事なの。
私達はノルマに追われて、一件でも多く契約をとって、はじめて給料がもらえるのよ」
「小さい街だから、見られても不思議じゃないわ
あなたのようにね」
そばにいないと折れてしまいそうだったか弱い妻。
今は堂々として、自分を主張している
だが、今は人の言うことに耳を傾ける余裕はない
隆は黙って由紀の話しを聞いていた。
