
夜が開けるまで
第2章 新人社員
ざわついていた室内がいつの間にか、しーんとして拓馬の歌声に聞き入っている。
拓馬は席をたち、みんなの前に立つと画面を見ずに唄いあげた。
予想外の拓馬の歌唱力
そして、拍手喝采で拓馬を持ち上げた。
「上手いじゃないの!」
「保険屋やめて、デビューしたら?」
「わたしがマネージャーやるわ!」
言いたい放題の外交員達は酔った勢いで、拓馬の腕や肩に絡んでは、色めき立っている。
ほぼセクハラ状態だ。
「向井くんは、声もいいし顔もいいし、背も高いし言うことないわね〜」
「ねぇねぇ。彼女いるんでしょ〜?」
「いえ、フリーですよ」
「私があと20年若けりゃね〜」
こうして、拓馬は営業所の外交員達を虜にした。
