
夜が開けるまで
第3章 真夏の夜の夢
街にいよいよ祭りがやってきた。
各町内会が趣向を凝らした山車が勢揃いする最大のお祭りだ。
この日は、拓馬も、会社を欠勤していた。
祭りだからと仕事を休む新人に由紀は複雑だった。
なぜ複雑なのか
欠勤してもノルマを果たせば、営業の世界ではヨシとするからだ。
しかし、このままでは拓馬はノルマを果たせそうにもない。
祭りの日は商店街は気ぜわしく契約を取る空気ではなかった。
夕方、由紀の携帯に拓馬からメールが入った。
「太鼓やってます。見にきて下さい」
なぜか、絵文字がガッツポーズ。
いつも一方的な新人に由紀は困惑した。
だが、拓馬の存在はどこか心にひっかかっていた。
