
夜が開けるまで
第3章 真夏の夜の夢
「あなた、ここを誰のシマだと思って気安く声をかけてるのかしら」
「ずいぶんとお高くとまった女だなぁ」
赤い顔をして酒の匂いをさせた男が、由紀の顔を覗き込むように迫ってきた。
「ここはイワタさんがシメてる界隈よ。
何かあれば、飛んでくるのは警察じゃないわよ」
そう言葉を発した途端、由紀のバッグから、けたたましい携帯の着信音が鳴り響いた
不意打ちの大音量に、彼女自身も、取り囲んだ男達も一瞬怯んだ。
普通の女性なら隙を見て逃げ出すだろう
しかし彼女は悠然と、バッグからスマートフォンを取り出し、男達の前で会話を始めた
「連絡遅いじゃない。おかげで店の前でナンパされちゃったわ。店に来てくれる?」
