
夜が開けるまで
第3章 真夏の夜の夢
毛先を軽く巻いた黒髪
胸元のあいた濃紺のサテンのワンピースを着た彼女を、拓馬は頭からつま先まで一通り眺めると呟いた。
「いつもと全然雰囲気が違うので一瞬、誰かわかりませんでした。
こうやって2人だけで話が出来て、嬉しいです」
拓馬は片手を伸ばし、由紀の手を握り締めると、指先を絡ませた。
そして、長身の上半身を傾けながら、じっと彼女の顔を覗き込んだ。
「俺の心にはトレーナーしかいない。たとえ結婚してるってわかってても好きな気持ちは抑えられなくて…苦しい…」
拓馬はそう囁くとゆっくり顔を近づけ、由紀の唇と重ね合わせた。
