
夜が開けるまで
第3章 真夏の夜の夢
「こんなところで、人が見てるわ」
由紀は唇を重ねてきた拓馬を軽く突き放すと、小さな声で呟いた。
そして用心深く辺りを見回すと、少しだけ拓馬から距離を置いて座り直した。
「じゃあ、どこがいいですか?
人が見てない所ならどこでもいい?」
拓馬はいたずらっぽく、由紀の心を見透かすかのように瞳を覗き込む。
小悪魔のような、翻弄されそうな眼差しに由紀は思わず視線をそらした。
「友達のオヤジが所有しているヨットがそこにありますよ。行きましょう」
拓馬はそう言うと由紀の腕を引っ張り駆け出した。
