夜が開けるまで
第4章 禁断の果実
濃密なキスのあと、由紀は拓馬の頬に手を添えながら瞳を覗き込んだ。
「あなたとは夜しか会えないわ。
他の恋人達のように楽しそうに手をつないで
街を歩く事もない。
それでも私はあなたのカノジョなの?」
由紀は小さな声で囁いた。
「芸能人だって、そうですよ」
拓馬ははにかんで答えた。
「俺にとって由紀さんは大切な女性。
こうやって二人きりでいられたら、それでいい」
拓馬はそう答えると、渾身の力で由紀を抱きしめた。
それでも、拓馬の腕の中に抱かれても、愛を囁かれても
愛の海に飛び込むことはできなかった。
彼女の心の中に二人の人格が葛藤していた。
甘い罠にかかってはいけないと戒める自分
新しい生き方をしたいと渇望する自分