【S】―エス―01
第2章 予兆
彼の名前は斎藤 瞬矢(さいとう しゅんや)。
所々目にかかる艶やかな黒髪と、光の加減では茶色にも紺色にも見える瞳が印象的な、一見ごく普通の21歳だ。
整った顔立ちとすらりと高い身長、艶やかな黒髪の間から覗く憂いを帯びた瞳は、見る者全てを惹き付けてやまない。
だが、そんな彼が他者と深く関係を持たず1人でいるのには、少なからず理由があった。
それは、彼自身も知らないところにあるもの。
胸の悪くなるようなニュースから目を背けた瞬矢は、眉間に皺(しわ)を寄せたまま洗面所へ行き蛇口を捻る。
勢いよく流れ出た冷水に両手を浸し、2、3度顔を洗う。
毎回彼の脳裏に甦る記憶があった。それは、燃え盛る炎の中の記憶。
――――
「――刹那ぁ!」
まだ少年だった彼は、その名を叫びながら夢中で炎の中で佇む少年に手を伸ばす。
その時、天井から梁が落ち、ぷつりと遮断される。
――顔を上げ、鏡に映る自分を見て瞬矢が毎回思い出すのは死んだ弟の存在だった。
「刹……那……」
鏡の中の自身に向けてぽつりと呟いた彼は、濡れた髪の毛先から頬を伝い、ぽたぽたと滴り落ちる水滴に視線を送る。
所々目にかかる艶やかな黒髪と、光の加減では茶色にも紺色にも見える瞳が印象的な、一見ごく普通の21歳だ。
整った顔立ちとすらりと高い身長、艶やかな黒髪の間から覗く憂いを帯びた瞳は、見る者全てを惹き付けてやまない。
だが、そんな彼が他者と深く関係を持たず1人でいるのには、少なからず理由があった。
それは、彼自身も知らないところにあるもの。
胸の悪くなるようなニュースから目を背けた瞬矢は、眉間に皺(しわ)を寄せたまま洗面所へ行き蛇口を捻る。
勢いよく流れ出た冷水に両手を浸し、2、3度顔を洗う。
毎回彼の脳裏に甦る記憶があった。それは、燃え盛る炎の中の記憶。
――――
「――刹那ぁ!」
まだ少年だった彼は、その名を叫びながら夢中で炎の中で佇む少年に手を伸ばす。
その時、天井から梁が落ち、ぷつりと遮断される。
――顔を上げ、鏡に映る自分を見て瞬矢が毎回思い出すのは死んだ弟の存在だった。
「刹……那……」
鏡の中の自身に向けてぽつりと呟いた彼は、濡れた髪の毛先から頬を伝い、ぽたぽたと滴り落ちる水滴に視線を送る。