【S】―エス―01
第2章 予兆
――201X年 4月1日。
「――! 夢……か」
両脇をビルに挟まれた小さな建物の3階にある一室で、1人の青年がはたと目を覚ます。
すぐ左側にある窓に付けられたブラインドの隙間からは、太陽の光が差し込む。
接客用の黒い革のソファから彼は起き上がり、えらい夢を見たものだと右手で頭を抱え溜め息を漏らす。
Tシャツにジャージといった格好の彼は、ひとつあくびをすると重たい瞼のまま、おもむろにテレビをつける。
『今朝方、公園で男性の遺体が発見されました。傷口は日本刀のような鋭利な刃物で切られており、身元は未だに不明。尚――』
テレビではちょうど朝のニュースがやっており、聞こえてきたのはリポーターの声で、画面上にはブルーシートに覆われた現場の様子が映し出されていた。
「……? あれ、この場所……」
低めのよく通る声でごちた後、テレビニュースを食い入るように見つめた。
だが「気のせいだ」とすぐさま視線を逸らし、気だるそうに寝癖のついた黒髪を左手でくしゃくしゃと掻きむしる。