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【S】―エス―01

第7章 再会の旋律

 

 ――そして現在。


 櫻井という男の残した言葉もそうであるが、なぜ警察が櫻井を逮捕に踏み切ったのか。そして早々の捜索終了。


 自分への疑いが晴れたのは喜ばしいことだが、その反面、瞬矢は警察内部の体制に疑念を抱かずにはいられなかった。


 瞬矢は今一度、訝(いぶか)しげに警察署の建物を振り仰ぐ。


     **


 ――7月16日。


 事件に終止符が打たれてから早2ヶ月が経過し、至るところで蝉の鳴き声が聞こえるようになっていた。


 街を行き交う人々にも半袖が目立つ。


「でも、やっぱり変よ」


 夏休み前のテストも終わり、久々に顔を見せた茜が切り出す。彼女も例に漏れず夏物の制服に身を包んでいる。


「ん?」


「いくら自首してきたからって、証拠もないのに……」


 どうやら茜も、瞬矢と同じことを考えていたらしい。


「まぁな」


 しかしそのお陰で助かったのは事実であり、複雑な心中、瞬矢は曖昧な返事しか返せなかった。


「それでね、ひとつ思い出したの」


 鞄から1枚の写真を取り出し見せる。
 

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