【S】―エス―01
第7章 再会の旋律
◇3
午後、櫻井 陸が逮捕されたことで瞬矢は無事、無罪放免となった。警察署の入り口を出たところで茜が駆け寄り迎える。
だが、瞬矢にはどうにも腑に落ちない点があった。それはほんの少し前のこと――。
瞬矢の視界に、刑事に連れられ一定の歩調で歩いて来る1人の男が映る。
白っぽいハイネックのシャツに眼鏡をかけたその男は、すれ違いざま瞬矢に言った。
「彼の指示かって? 違うね。僕は、自分の意思で動いてるだけさ」
口元に笑みを湛えてはいるが、その口調はとても淡々としたものだ。
彼はふと足を止め、何かを考えるかのような表情で天を仰ぐ。
「ああ、そうそう」
そう言って男は思い出すかのように続ける。
「彼から君に伝言だ」
一度振り返り横目で瞬矢を捉えると、にっこり笑い言った。
「『【鍵】を大切に』」
窓から差す光が、男の横顔をにわかに照らす。
(【鍵】……?)
傍らにいた刑事に促され再び歩き出した彼は、どこか聞き覚えのある鼻歌をまじえる。
午後、櫻井 陸が逮捕されたことで瞬矢は無事、無罪放免となった。警察署の入り口を出たところで茜が駆け寄り迎える。
だが、瞬矢にはどうにも腑に落ちない点があった。それはほんの少し前のこと――。
瞬矢の視界に、刑事に連れられ一定の歩調で歩いて来る1人の男が映る。
白っぽいハイネックのシャツに眼鏡をかけたその男は、すれ違いざま瞬矢に言った。
「彼の指示かって? 違うね。僕は、自分の意思で動いてるだけさ」
口元に笑みを湛えてはいるが、その口調はとても淡々としたものだ。
彼はふと足を止め、何かを考えるかのような表情で天を仰ぐ。
「ああ、そうそう」
そう言って男は思い出すかのように続ける。
「彼から君に伝言だ」
一度振り返り横目で瞬矢を捉えると、にっこり笑い言った。
「『【鍵】を大切に』」
窓から差す光が、男の横顔をにわかに照らす。
(【鍵】……?)
傍らにいた刑事に促され再び歩き出した彼は、どこか聞き覚えのある鼻歌をまじえる。