【S】―エス―01
第8章 記憶の鍵
8月18日、午前11時30分。
瞬矢たちは最寄りの時計店に来ていた。
店の至るところに様々な時計が所狭しと並べられ、なかなかレトロな雰囲気を漂わせている。
「こりゃ、時計じゃあないな」
時計店の店主は眉間に皺(しわ)を寄せ、険しい顔で言う。更にはこうも続ける。
「この【S‐06】って数字。シリアルナンバーじゃない」
ならば、今まで瞬矢たちが腕時計と思っていたこの物体はいったいなんなのか。
店を出て尚そんな思いがよぎり、しばし手の中のそれを見つめる。
(あと残ってるのは、このメモだけか……)
店先では、中にいる時よりも蝉の鳴き声が一層鼓膜に響いた。
「『全てはここにある』か。となるとやはり東雲 暁が……」
どうやら知らない間に独りごちていたらしく、しまったとばかりに茜の方を見やる。
「いいよ。正直、あまり実感湧かないんだ。思い出が少ないせいかな?」
そう言って頭(こうべ)を垂れた彼女は寂しく微笑む。
「それに、夢を見たの。初めて見るのに懐かしい……たぶん昔の夢。ドアがあって、でも『絶対入っちゃダメ』だって」
瞬矢たちは最寄りの時計店に来ていた。
店の至るところに様々な時計が所狭しと並べられ、なかなかレトロな雰囲気を漂わせている。
「こりゃ、時計じゃあないな」
時計店の店主は眉間に皺(しわ)を寄せ、険しい顔で言う。更にはこうも続ける。
「この【S‐06】って数字。シリアルナンバーじゃない」
ならば、今まで瞬矢たちが腕時計と思っていたこの物体はいったいなんなのか。
店を出て尚そんな思いがよぎり、しばし手の中のそれを見つめる。
(あと残ってるのは、このメモだけか……)
店先では、中にいる時よりも蝉の鳴き声が一層鼓膜に響いた。
「『全てはここにある』か。となるとやはり東雲 暁が……」
どうやら知らない間に独りごちていたらしく、しまったとばかりに茜の方を見やる。
「いいよ。正直、あまり実感湧かないんだ。思い出が少ないせいかな?」
そう言って頭(こうべ)を垂れた彼女は寂しく微笑む。
「それに、夢を見たの。初めて見るのに懐かしい……たぶん昔の夢。ドアがあって、でも『絶対入っちゃダメ』だって」