【S】―エス―01
第8章 記憶の鍵
――そして現在。
茜はあらかじめ表に回してあった黒の軽自動車に駆け寄り、早く来いとばかりに手を振る。
その様子を例えるならば、久々の散歩に心躍らす小型犬……といったところだろうか。
「……ったく」
多少の呆れ、そして本日2度目の苦笑と共に瞬矢も車に乗り込み、いざ出発。
屋敷の住所は車で1時間ほどのところ、人里離れた山奥に位置していた。
時刻は午後3時10分。
10月中旬ともなれば、山奥は日が傾くとさすがに肌寒い。持って来ていた上着を羽織る。
どうやら、屋敷が焼失したというのは事実らしい。
すぐ右側には、部分的に焦げ付いた樹木が天に枝を広げ聳え立っていた。
ふと右側に視線を送ると、焼け跡の真ん中に佇む茜がその木を見上げている。
吹いた風にひらひらと飛ばされてきた灰と土にまみれ煤(すす)けた写真。瞬矢は、それを身をかがめ拾い上げる。
女性と共に無邪気に笑う少年が写っていた。それは、ことある毎に瞬矢の意識下に現れた黒髪の少年。
「お母……さん?」
茜はあらかじめ表に回してあった黒の軽自動車に駆け寄り、早く来いとばかりに手を振る。
その様子を例えるならば、久々の散歩に心躍らす小型犬……といったところだろうか。
「……ったく」
多少の呆れ、そして本日2度目の苦笑と共に瞬矢も車に乗り込み、いざ出発。
屋敷の住所は車で1時間ほどのところ、人里離れた山奥に位置していた。
時刻は午後3時10分。
10月中旬ともなれば、山奥は日が傾くとさすがに肌寒い。持って来ていた上着を羽織る。
どうやら、屋敷が焼失したというのは事実らしい。
すぐ右側には、部分的に焦げ付いた樹木が天に枝を広げ聳え立っていた。
ふと右側に視線を送ると、焼け跡の真ん中に佇む茜がその木を見上げている。
吹いた風にひらひらと飛ばされてきた灰と土にまみれ煤(すす)けた写真。瞬矢は、それを身をかがめ拾い上げる。
女性と共に無邪気に笑う少年が写っていた。それは、ことある毎に瞬矢の意識下に現れた黒髪の少年。
「お母……さん?」