テキストサイズ

【S】―エス―01

第8章 記憶の鍵

 茜が手にしていたのは、録画していたと思われる小型の定点カメラだった。


 パワーをオンにすると電池はわずかにだが残っており、画面右下に日付が表示される。


 それは、10年前の12月22日。


 乱れた画像とノイズに紛れ、何か喋っているのが分かった。


『……の依頼で……為の薬を造ることになった。これは……で、水面下に進めなければならない』


 次第にはっきりとしてきたその画像に映る人物こそ、まさに茜の父親であった。


 奥には、研究者の姿が4人ほどありその中に殺された渡辺、中川、六野の姿も窺えた。


『何度目の実験になるだろう。多くの失敗例の末、level 3まで引き出せる薬を造り出すことに成功した』


 画面が切り替わり、1人の少年が映し出される。


 少年は椅子に座らされ、手足は付属の革ベルトによって拘束されていた。


 すでになんらかの薬を投与されたのか、少年の目は酷く虚(うつ)ろだ。


「あの子、写真の……」


 液晶画面が部屋の片隅を照らす中、映像を見つめる茜が思い出したようにぽつり溢す。


「……ああ」
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ