
【S】―エス―01
第8章 記憶の鍵
今まで頼りにしてきた広く大きな背中は、今まで見たことがないくらい小さく弱々しかった。
頭を垂れ瞬矢は言葉を紡ぐ。
「はは……。ほんとバカだよな、今まで忘れてたなんて……」
俯いたまま乾いた笑顔に加え、自嘲じみた言葉を吐き捨てる。声は心なしか震えていた。
「初めから【普通】になんて、なれるわけなかったんだ」
写真を右手の甲に押し付ける形で顔を覆う。わずかに窺える歪んだ口元から嗚咽が漏れる。
それはいつの日か、桜の木の下で瞬矢が見せた表情とどこか似ていた。
ただひとつ違っていたのは、指の間から溢れ落ちる温かい小さな雫。
手にしていたメモリーカードを、胸の前でぎゅっと握りしめる。
ここでもし安易な慰みの言葉をかけたとして、きっと気休めにもならない。
声をかけたくともかける言葉などそう易々と見つからず、歯痒さに1人下唇を噛む。じわり、自然と視界が滲んだ。
追い風が吹き、後押しされるように止まっていた歩を進める。
背後から手を回し、ゆっくり片方ずつ地面に膝をつく。そしてそっと震える背中に頬を寄せた。
頭を垂れ瞬矢は言葉を紡ぐ。
「はは……。ほんとバカだよな、今まで忘れてたなんて……」
俯いたまま乾いた笑顔に加え、自嘲じみた言葉を吐き捨てる。声は心なしか震えていた。
「初めから【普通】になんて、なれるわけなかったんだ」
写真を右手の甲に押し付ける形で顔を覆う。わずかに窺える歪んだ口元から嗚咽が漏れる。
それはいつの日か、桜の木の下で瞬矢が見せた表情とどこか似ていた。
ただひとつ違っていたのは、指の間から溢れ落ちる温かい小さな雫。
手にしていたメモリーカードを、胸の前でぎゅっと握りしめる。
ここでもし安易な慰みの言葉をかけたとして、きっと気休めにもならない。
声をかけたくともかける言葉などそう易々と見つからず、歯痒さに1人下唇を噛む。じわり、自然と視界が滲んだ。
追い風が吹き、後押しされるように止まっていた歩を進める。
背後から手を回し、ゆっくり片方ずつ地面に膝をつく。そしてそっと震える背中に頬を寄せた。
