【S】―エス―01
第9章 刹那
――午後9時40分。
立ち込める暗雲に月光は遮られ、湿りを帯びた空気が雨の訪れを感じさせた。
そこは、段ボールや廃材が積まれた倉庫か物置のような場所。
その殺風景な場所とは到底似つかわしくないクラシック音楽が流れる。
ベドルジハ・スメタナ連作交響詩第2曲『モルダウ』。
ステレオから流れるその曲にしばし耳を傾け、やがて着ていたコートを綻びが目立つ長椅子に置く。
そして遠巻きにある半透明なビニールカーテンを目視し、ゆっくり歩み寄る。
カーテンの端に手をかけた。
その時、流れていた曲は『モルダウ』から『新世界より』に切り替わり、雰囲気をまたがらりと変化させる。
伏し目がちに刹那は、そっと掴んでいたカーテンを引く。
くたびれた白いパイプベッドの上に横たわる1人の人物。その体には、無数の管が繋がれていた。
肌は病的なほどに血色が悪く、刹那同様、すっと通った鼻筋と整った唇に艶は見られない。
唯一、骨格から人物が男性であることが窺える。
彼を視界に捉えた刹那は、ふっと口元を緩ませ一言。
「ただいま」
立ち込める暗雲に月光は遮られ、湿りを帯びた空気が雨の訪れを感じさせた。
そこは、段ボールや廃材が積まれた倉庫か物置のような場所。
その殺風景な場所とは到底似つかわしくないクラシック音楽が流れる。
ベドルジハ・スメタナ連作交響詩第2曲『モルダウ』。
ステレオから流れるその曲にしばし耳を傾け、やがて着ていたコートを綻びが目立つ長椅子に置く。
そして遠巻きにある半透明なビニールカーテンを目視し、ゆっくり歩み寄る。
カーテンの端に手をかけた。
その時、流れていた曲は『モルダウ』から『新世界より』に切り替わり、雰囲気をまたがらりと変化させる。
伏し目がちに刹那は、そっと掴んでいたカーテンを引く。
くたびれた白いパイプベッドの上に横たわる1人の人物。その体には、無数の管が繋がれていた。
肌は病的なほどに血色が悪く、刹那同様、すっと通った鼻筋と整った唇に艶は見られない。
唯一、骨格から人物が男性であることが窺える。
彼を視界に捉えた刹那は、ふっと口元を緩ませ一言。
「ただいま」