【S】―エス―01
第9章 刹那
脚の錆びた簡易机に置かれたパソコン画面をちらりと見やる。
そこにあるのは、今現在ステレオから流れている曲のリスト。どうやら、ランダムに選曲されているらしい。
接続先のモニターには、彼の血圧や心拍数が波形となって表示されていた。その数値をさっと確認し、刹那は言う。
「調子いいみたいだね」
恐らく起き上がる力もないであろう彼は、頬に皺を寄せ三日月の笑みで、パソコン画面に視線を送る。
「この曲、好きなのかい?」
すっかり潤いをなくし、罅割れた唇に一瞬見せた肯定の笑み。
それに応えるかのように再度流れる曲に耳を傾け、笑みを湛えながら言う。
「僕もだよ」
その笑顔と口調は、親しい者に向けられるそれの如く穏やかで優しいものだった。
渇ききった唇の端から息を漏らし、わずかに言葉を紡ぐ。
ほぼ唇の動きのみでしかないその声を、刹那は顔を寄せて読み取り答える。
「ああ、彼に会ったよ」
近づけた顔を上げると同時に、ふっと目を細めた。
とうとう降り始めた小雨が、ぱらぱらと屋根そしてくすんだ窓を不規則に叩く。
そこにあるのは、今現在ステレオから流れている曲のリスト。どうやら、ランダムに選曲されているらしい。
接続先のモニターには、彼の血圧や心拍数が波形となって表示されていた。その数値をさっと確認し、刹那は言う。
「調子いいみたいだね」
恐らく起き上がる力もないであろう彼は、頬に皺を寄せ三日月の笑みで、パソコン画面に視線を送る。
「この曲、好きなのかい?」
すっかり潤いをなくし、罅割れた唇に一瞬見せた肯定の笑み。
それに応えるかのように再度流れる曲に耳を傾け、笑みを湛えながら言う。
「僕もだよ」
その笑顔と口調は、親しい者に向けられるそれの如く穏やかで優しいものだった。
渇ききった唇の端から息を漏らし、わずかに言葉を紡ぐ。
ほぼ唇の動きのみでしかないその声を、刹那は顔を寄せて読み取り答える。
「ああ、彼に会ったよ」
近づけた顔を上げると同時に、ふっと目を細めた。
とうとう降り始めた小雨が、ぱらぱらと屋根そしてくすんだ窓を不規則に叩く。